=備えあれば憂いなし…『個人編』=
―━――━━―━――━━―━━――━━―━――━━―━━━━━
◆経営者の”妻子”は「借入金の相関図」をつくり、個人債務を把握しておこう! ◆
―━――━━―━――━━―━━――━━―━――━━―━━━━━
◆PDF版◆
昨今の傾向として、中小企業経営者のご家族からのご相談が多くなってきています。
「夫が経営する事業が銀行の融資打ち切りや貸し剥がしのため資金繰りがうまくいかずこのままでは倒産してしまう…!」と、社長の妻が蒼白な表情でご相談にいらっしゃるケースが多くなっています。
「夫が何とかしてこいと云うので私も息子達もいろんな手段で借金してきましたが、もうこれ以上借りてくるのは不可能なので…。」と云うのです。今月末の資金繰りのメドさえ立っていない状況に、精根尽き果て途方に暮れてのご相談です。
お話を伺っているうちに、少しずつ社長の問題やご家族の関係が見えてきます。
取引先が合併した影響により今までの受注量が激減し、社内のリストラで規模を縮小しても借入金の返済やリースの支払い縮小にはなかなか応じてもらえず、やむなく妻がサラ金で借り入れ、それを銀行の返済やリースの引き落としに充て、それでも足りないときは長男からも借りたりしていたようです。
致命的だったのは、ノンバンクからの借入枠を増やすために長男と長女をも連帯保証人に引き入れていたことでした。一家全員が連帯保証人になってしまったわけです。子供たちが連帯保証人になったことによって増えた400万円の借入枠がわずか430万円に増えただけで、30万円の増額のために子供達が連帯保証人に加わってしまったわけです。
その後のお話として、結局その会社は倒産してしまい、このノンバンクは、新たに連帯保証人になったサラリーマンの長男と長女の勤務先に対して、本人の給料を差し押さえる手続きをとったのです。
会社が倒産して間もなく、長男と長女もそれぞれ自己破産の手続きとったそうです。
中小企業が経営不振に陥ったとき、その会社のスクリーニングの中から見えてくる数々の問題点の中には、経営者自身の債務問題もさることながら、妻や子供たちも会社の債務にたいして『保証債務』として関わっているケースが多く見受けられます。
いざの事態にならないためにも、家族の一人一人が「債務相関図」」を整理しておくことが、経営者家族の心構えとして認識しておくことが大切なことなのではないでしょうか。
◆会社の借入金やその他の債務に関わる「債務の相関図」を整理すると…
◇借 入 先…
金融機関(銀行、リース会社、信販会社、ノンバンク、サラ金、街金融等)
恩借り先(親兄弟などの親族、友人、知人、取引先)
◇提供担保…
会社の資産(不動産、預貯金、受取手形、売掛金、株式債権、生命保険、等)
個人の資産(妻の不動産、親族の不動産、友人の不動産、など)
◇連帯保証…社長個人、妻、長男、長女、夫や妻の親族、友人、知人、取引先
サラ金や街金融を金融機関と考えるには如何なものかと思いますが、中小零細企業の資金繰りの中に、こっそり「社長借入金」として存在していることも否めません。
そればかりか、ノンバンクの取り立ても厳しいと云われていますので、借り入れするときは返済のメドがない限り、借り入れすることは本当に危険だと思います。
中小企業経営者にありがちなことは、まだ受注に結びつくかどうか分からないような小さな商談なのに、あたかも”受注間違いなし”というような考えなって「もう少し辛抱すれば何とか切り抜けられる…」と云った具合に楽観的な判断に陥り、その”受注間違いなし”が前提にして上で、いわゆる「恩借り先」の関係者から借金をしたり、その人に「連帯保証人」になってもらったりして資金繰りをしているケースが多く見受けられるのです。
これは、身近で支えてくれる”恩人を裏切る行為”なのですから、後々、再建どころか、再起さえ出来ない事態になることを社長も家族もしっかり自覚してほしいと思います。
会社の資金繰りが厳しくどうしても外部から資金調達をしなければならないような状況であっても、前述の項目で下線( )つけたような問題の起きやすい借入先からでなければ借りられないといった場合、このとき経営者はどのような決断をするべきなのでしょうか。
連帯保証人がいなければ貸せないと云われても、それでも何とか借金したいと連帯保証人を引きずり込んでまで経営を続けることは、果たしていいことなのでしょうか。
それとも、金融機関が融資を止めたり引き上げ始めたときには、傷が深くならないうちに経営を継続することは断念し早々に事業を閉鎖することを考えるほうが賢明な判断だといえる場合が多いと思います。
中小企業のこのような実態を月々の試算表を通して経営状態を診ている会計事務所として、債務欄の借入金の小さな金額の動きにも見逃すことなく注意を払い、適切なアドバイスをすることが顧問先の安全な経営のためにも必要ではないでしょうか。
そのためには、社長に対し会社の『清算貸借対照表(実態B/S)』づくりの指導が必要であり、一方、社長夫人や親族には『債務の相関図』づくりの指導が必要になってくるのではないかと考えます。
『債務の相関図』は、出来るだけ毎月更新しておけば、会社に万一の危機が起こった場合でも、慌てず対応できるだけでなく、一生涯かかっても弁済できないような過剰な債務を負わないための「ブレーキ役」として威力を発揮してくれることでしょう。
顧問先の指導は会計事務所の大きな課題であると思いますが、社長や親族が先生方のアドバイスにしっかり耳を傾けてもらう啓発用ツールとして、『債務の相関図』づくりをご採用いただいてはいかがでしょうか。
さらに付け加えるとするならば、社長は自分の会社の債務に対して連帯保証人になっているだけではなく、友人や知人など第三者の連帯保証人になっている場合もあり得ますので、相続人である家族としては、社長が負うそれらの保証債務をしっかり把握しておくことも大切です。 時によっては、社長に相続が発生したら相続放棄をしなければならない場合も考えられますので、『債務の相関図』づくりでは社長の債務の把握も重要になってくることでしょう。
◇risk counselor◇リスク・カウンセラー◇risk counseling◇リスク・カウンセリング◇
*━━*━━*━━*━━*━━*━━*━━**━━*━━*━━*━━*━━*