2018年04月01日

使いこなせなくても支障はないかも

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気になる! コトバのあれこれ
使いこなせなくても支障はないかも
『使いこなせたら一人前 社会人日本語』
山本 晴男/クロスメディア・パブリッシング
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 この本は、社会人ならではのことばを広く浅く紹介しています。ここでは、ビジネスの場以外ではあまり使われない話しことばを取りあげてみたいと思います。
 まず『出禁(できん)』。得意先を持つ身で、これほど怖いことばはありません。出入りを禁止されることです。とくに何らかの理由で得意先を怒らせてしまい、その会社の敷居をまたげなくなることです。
 次に出張のときなどの『あごあし』。あごは食事代、あしは交通費のこととあります。「先方があごあし持ってくれてね」と言えば、費用を負担してくれたという意味になります。
 最後は『けいつね』。計上などの同音異義語があるため、経常利益を『けいつねりえき』と言います。これに限らず、意味をはっきりさせるための言い換え表現は、頻繁に使うようになるまでは咄嗟に漢字に置き換えられず、とまどうのではないでしょうか。
 タイプの異なることばを選びましたが、これらのことばをお使いでしょうか。働き方が変わって、口頭での情報交換が減ると、こういったことばも使われなくなるかもしれません。

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2018年03月01日

省略が過ぎませんか?

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省略が過ぎませんか?
『しっくりこない日本語』
北原 保雄 著/小学館 出版
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 日本語には、『話し言葉』と『書き言葉』の区別があります。この本によると、それらに加えて『打ち言葉』という概念ができつつあるようです。スマホなどでメッセージを『打つ』ときの言葉ということです。

 この本から『打ち言葉』の例をいくつかあげてみましょう。A-1.置きっぱ、A-2.脱ぎっぱ、B.ちゃけばさあ、C-1.失ばな、C-2.密ばな、C-3.素ばな、D.きよぶた、E.あけおめ、F.レンチン、G.スマけん、H.ごきぶり。それぞれ何の略が推測できたでしょうか。正直なところ、省略し過ぎていて元の状態を想像するのは難しいように思えます。

 答えは、次のとおりです。
 A-1.置きっぱなし、A-2.脱ぎっぱなし、B.ぶっちゃけ話を言えばさあ、C-1.失恋の話、  C-2.秘密の話、C-3.素で話す話、D.清水の舞台から飛び降りる、E.あけましておめでとうございます、F.レンジでチンする、G.スマートフォンで検索する、H.ごきげんよう。お久しぶり。

 メッセージを『打つ』ときの合理化はとどまるところを知らないようです。

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2018年02月01日

動物を1頭、2頭と数えるようになったのは

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動物を1頭、2頭と数えるようになったのは
『日本の助数詞に親しむ』
飯田 朝子 著/東邦出版
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 ものを数えるとき数字のうしろにつける助数詞が、数多く登場するこの本から、『頭』をご紹介します。
 人間以外の生き物を数えるとき、人間が抱きかかえたりできるような、人間より小さい生き物には『匹』、それ以外に『頭』を使うのが一般的だそうです。ただ、バクテリアや菌といったとても小さな生物は一個、二個と数えたり、「バクテリア4000株を培養」のように『株』を使うといった例外はあります。いまでは誰もが使っているこの『頭(とう)』ですが、比較的新しいことばで、それまでは大きさに関係なく『匹』を使って数えていたそうです。(昔、同じ『頭』でも『ず』や『かしら』と読み、牛や犬、鳥、魚を数えるのに使われていたことがありますが、現在の『頭(とう)』とは異なる助数詞です。)
『頭』を最初に使ったのは、1882年に開園した上野動物園です。西洋の動物学の資料を翻訳する際、動物の頭数(あたまかず)を数える英語の『head』を直訳して漢字の『頭』を当てたことが始まりだそうです。その後20世紀初頭の文学作品で、牛や馬を『頭』で数える例が見られるようになり、大きな動物を『頭』で数える習慣が定着しました。

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2018年01月01日

意外と説明できないことばの違い

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意外と説明できないことばの違い
『似ている日本語』
佐々木 瑞枝 著/東京堂出版
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 なんとなく違う印象を受けるものの、どう違うか訊かれても答えに窮する似ていることばが説明されているので、ここでいくつかご紹介します。
 まず最初は『素晴らしい』と『すてき』。どちらも優れていて感心させられる様子を言いますが、『素晴らしい』が客観的な評価であるのに対して『すてき』は主観的な感情です。「すてきなプレゼントありがとう」といった場合、プレゼントの値段や品質というより、自分のセンスに合っているという意味だそうです。
 次に『美しい』と『きれい』。どちらも「色・形・音」などの調和がとれていて快く感じられる様子。『きれい』には「清潔である」「整然としている」という意味もあり、人の容姿にはどちらも使えますが、「美しい部屋」(部屋のレイアウトが素晴らしいなど)と「きれいな部屋」(掃除が行き届いている)とでは意味が異なります。
 最後は『本心』と『本音』。『本心』は隠れている本当の気持ち、『本音』は隠れている本当の気持ちを言葉に出して言うことだそうです。万引きをした男が「すみません。本心からしたことではありません」とは言えても「本音からしたことではありません」とは言えません。

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2017年12月01日

今とはちょっと意味が違う 武家ことば

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 今とはちょっと意味が違う 武家ことば
『使ってみたい武士の日本語』
野火 迅 著/草思社 出版
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 年末年始は、時代劇のドラマなどが増えますので、この本を時代劇ファンにお勧めしたいと思います。

 江戸時代の武家社会で使われると、現在使われている意味とはずいぶん違ってくることばを2つご紹介します。ひとつは『遠慮』。武家社会では、軽い罪に対し、外出を禁止する禁足の刑が科されましたが、それは重い順から、「蟄居(ちっきょ)」「閉門」「逼塞(ひっそく)」「遠慮」と分かれていたそうです。「蟄居」と「閉門」は、事実上の禁固刑で、「逼塞」と「遠慮」は、夜間に限り、くぐり戸からの外出が認められていました。もっとも軽い「遠慮」においては、親戚や友人の訪問に応対することも自由だったとか。

 もうひとつは『借上げ』。財政危機に陥った藩は、藩士から禄(現代風にいえば給与)の一部を借りていました。これが「借上げ」ですが、財政危機で発動されただけに、この借金が返済されることは、まずありません。つまり「借上げ」は、事実上の給与カットにあたります。お金に関する直截的な表現を敢えて避けていたのではないでしょうか。

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