2018年05月01日

都心のマンションには、まだ狭くなる余地が?

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都心のマンションには、まだ狭くなる余地が?
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なるほど納得・・・・不動産!!……No.054   株式会社ありがとう・不動産
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 不動産経済研究所(https://www.fudousankeizai.co.jp/)発表の全国のマンション市場動向(2017年のまとめ)から、東京23区の新築マンションの平均価格と平均u単価を抜き出して平均専有面積(u)を求め、チャートにしました。たとえば最新の数字である2017年の平均価格は7089万円、平均u単価は108.3万円です。そこから7089÷108.3を計算した結果の約65.46uを平均専有面積と考え、その平均専有面積を縦軸(上にいくほど広い)に、1戸あたりの平均価格を横軸(右にいくほど高い)にとり、年に一度の発表に基づいて点をつけ、それぞれを線で結んだものが以下です。いずれも各年の平均ですが、推移を見ると傾向がわかります。
 まず、この推移を見て思い出す出来事をいくつかおさらいしたいと思います。まずはリーマン・ショックで、リーマン・ブラザーズ・ホールディングスは、2008年9月に破綻しました。次はアベノミクスと異次元と呼ばれる日銀の金融緩和で、第二次安倍政権の誕生は2012年12月、日銀総裁に黒田氏が就任したのは2013年3月になります。最後に相続税の増税が2015年です。これにより、資産をタワーマンションの高層階の持分にかえて節税するという手法が流行りました。
 チャートをご覧のとおり、リーマンショックのあと、それまでの平均価格の上昇から一転下落したのですが、同時に平均専有面積が狭くなりました。平均u単価を見ると、2006年は71.5万円、2007年は85.6万円、2008年は85.3万円、2009年は79.8万円となっています。平均u単価がリーマンショック前の水準まで下がらなかったため、専有面積を狭くして価格を下げたのだと思われます。その後、いわゆるアベノミクスの影響で株価が上昇するなどマンション販売にも好影響があったと思われます。ただ、会社員の収入や物価があがらない状況のなか、マンションの平均価格だけが上昇するのは限界があったのか、2016年と2017年は平均専有面積がぐんと狭くなり、リーマンショック直後に並びます。
 共働き世帯が増えたり、震災後の職住近接志向があったり、都心の建築制限の緩和があったり、さまざまな要因があって、価格が高騰しても都心のマンションの新規販売は続き、価格も上昇し、いまでは戸建てに割安感が感じられるほどになりました。それでもまだ大型マンションプロジェクトは続いています。具体的には、2年後に開催の東京オリンピックの選手村は、大会終了後改修されて、東京ドーム4個分相当の18ヘクタールの敷地に建つ24棟、合計5600戸のマンションになる予定です。
 バブルは、弾けるまでわからないともいいます。しかし、弾けたあと、住宅ローンの担保となっているマンションの価値が急落すれば、ローンが重くのしかかってくることは確かです。ご購入の際は、今後のマンションの需要と供給のバランスを考え、担保としての価値が下落しても心配のない範囲で住宅ローンを組まれることをお勧めします。

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2018年04月01日

中古住宅のご購入で不安なことは?

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中古住宅のご購入で不安なことは?
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なるほど納得・・・・不動産!!……No.053   株式会社ありがとう・不動産
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 インスペクション(建物状況調査)に関する意識調査結果が公開(https://www.zenjyu-hin.or.jp/activity/investigation_02.htm)されましたので、ご紹介したいと思います。このアンケートでは、中古住宅の購入者とそれを仲介する不動産事業者の両方が対象になり、購入者には、中古住宅を買うにあたっての不安要素を訊ね、不動産事業者には購入者がどのような点を不安に感じていると思うかを訊ねています。回答の選択肢は、『(A)かなり不安だと思う』『(B)やや不安だと思う』『(C)あまり不安ではないと思う』『(D)全く不安ではないと思う』で、グラフに含まれるのは、(A)または(B)の回答です。この調査の場合、買主の数字と不動産事業者の数字を比べて差が大きければ、不動産事業者の認識不足と考えられます。グラフではその差が大きい順に並べました。

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 数字の差が大きくなった質問(カッコ内はその差)は、@売買契約が成立した後で、欠陥住宅であると判明すること(17.2%)、A購入の手続きの流れが不明(15.7%)、B購入によって、損をしないかどうか(12.5%)という順序になりました。
 この@売買契約が成立した後で、欠陥住宅であると判明する不安について、買主と不動産事業者で差が大きくなった理由は、不動産事業者がお客様を理解していない点を別として、大きくふたつあると思います。ひとつめは、不動産事業者の立場としては、実物を目の前にして取引をする中古物件のほうに安心感を感じているということです。過去の耐震構造計算や杭打ちデータを偽造した事件においても、発覚まで時間がかかりました。中古物件の場合、不動産事業者は、何かしら問題があれば買主にお知らせする義務があり注意を払っていますが、一定の時間が経過してなお認識できない大きな問題は限られていると考えています。ふたつめは、欠陥がないか調べる方法や欠陥があった場合の備えに関する知識があるからだと思われます。まず欠陥がないか調べるには、専門家によるインスペクション(建物状況調査)を実施することができます。インスペクションは、売主や仲介不動産事業者とは関係のない第三者が住宅を傷つけることなく調べられる範囲で実施する家の健康診断のようなものです。詳細な検査が必要だとか、経過を観察したほうがよいとか、健康診断と似たような調査結果を得られます。また場合によっては、重大な欠陥が見つかったときのための中古住宅向けの保険に入ることも可能です。さらに、売主との調整によりますが、引き渡し後1年といった商習慣を超えた期間の保証を売買契約に明記することも可能です。実際に中古住宅をご購入されるときは、「住みだして半年後に雨漏りしたら、どうなりますか?」など具体的な疑問をぶつけてみてください。一生に何度もない決断をなさるお客様の不安を忘れがちな不動産事業者の社員も、ご不安に気づき、可能な選択肢をご提示できると思います。 

2018年03月01日

ひとり暮らしの高齢者にちょっとした配慮を

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ひとり暮らしの高齢者にちょっとした配慮を=================================================================
なるほど納得・・・・不動産!!……No.052   株式会社ありがとう・不動産
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 今月は、不動産に関係する東京都品川区の新しい取り組みをご紹介します。品川区は2018年度から、ひとり暮らしの高齢者の転居を支援する事業を始めます。この背景にあるのは、高齢者(特にひとり暮らし)の場合、新たに賃貸住宅を契約することが非常に難しい現状です。貸主の立場から考えると、高齢者が住居内で死亡した場合、いわゆる事故物件となり、それ以降の賃料が大きく下がり、次の入居者を見つけること自体難しくなるのは困りものです。その高齢者がひとり暮らしだった場合はさらに、ご遺体の発見が遅れたり、遺品の処分に困ったりすることも大きな不安要素となっています。そういった事態をカバーする保険商品もありますが、東京23区のように住宅需要の高い地域の貸主は、高齢者以外の入居者が見つかるだろうと考え、高齢者からの入居申込を受けつけるには至らないようです。そのいっぽう、高齢になると体力も衰え、バリアフリーの1階や小さめの間取りに引っ越したいといったニーズが生まれます。これらの事情を踏まえ、品川区は、緊急時に駆けつける親族などの保証人がいなくても高齢者が転居できる仕組みをつくったのだと思われます。
 具体的には、品川区から業務委託された品川区社会福祉協議会が物件探しや契約の相談に応じたり、入居後の安否確認から死後の家財処分、葬儀の手続きまで一括で対応したりする予定だそうです。ただ、これらの支援を受けるには、高齢者の収入等に一定の制限があります。また、こういった取り組みは、全国でも珍しいもので、品川区外の高齢者は支援を受けることができません。しかし、ひとり暮らしの高齢者は、グラフのように急速に増加中で、今後も増え続けると予測されています。(出典:内閣府 http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_2_1.html)

 グラフの緑の点線の左側が実績で右側が予測です。このグラフから、いくつかのことが見てとれます。最初に、高齢者のひとり暮らしの割合は、性別を問わず、増加の一途をたどっている点です。これは、家督相続の概念が失われたこと、親と子の生活圏が異なるケースが多いこと、非婚率が上昇していること、施設に入居するにも費用面や順番待ちなどの問題が多いことなど、数多くの原因が考えられます。次に、ひとり暮らしは、男性より女性が多い点です。こちらは、男性が年上の夫婦が多く、また女性のほうが平均寿命が高い傾向が続いていることなどが理由と思われます。ここで問題になるのは、通信技術に疎く情報にアクセスできない、いわゆる情報弱者や行政に支援を求めることを苦手とするのは、相対的に男性よりも女性が多いことです。

 そこで弊社では、家に関する困りごとを抱えた高齢の方々に対してできることがないか模索していきたいと考えています。行政のように多額の資金があるわけではありませんが、できる範囲で工夫をしたいと考えています。もし、お近くにそういった高齢の方がいらしたら、弊社につないでいただけないでしょうか。よろしくお願いします。

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2018年02月01日

投資やマインドの流れに巻き込まれない住宅選びを!

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投資やマインドの流れに巻き込まれない住宅選びを!
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 30年や35年といった長期ローンを組んで住宅を購入する方は多いと思いますが、ローン支払期間中のリスクは、見過ごされがちです。たとえば、終の棲家と思って購入された住宅を売却しなければならない不測の事態が想定されていないことがあります。新築物件の場合、人件費や資材の価格高騰を理由に高額物件となっていても、いったん中古になってしまえば、築年が近い周囲の中古物件の値段に大きく影響されるため、数年しか住んでいなくても、購入価格の70%以下まで値が下がることも多く、ローン残債より高い金額で売却できないことがあります。そんな事態に陥らないよう、購入される物件の金額だけではなく、周囲の物件の状況も考慮する必要があります。いっぽう、中古物件の場合は、すでに周囲の物件と比較されて価格がついているので相対的にリスクは少なくなりますが、それでも考慮すべきことがあります。

 たとえば最近では、都心の中古マンションの価格は、日経平均株価と連動していると言われています。毎月の日経平均の始値(https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/archives/data?list=monthly)と千代田区・中央区・港区において成約した中古マンションの平米単価(http://www.reins.or.jp/trend/mw/)から作成したグラフが以下です。たしかに都心の中古マンションの価格は、日経平均株価と連動していると言って問題ない結果になりました。
 結婚後も働く女性の割合が増えたことから、住宅のおもな購買層である30代や40代では、職場に近い住宅が好まれる傾向が強くなり、マンションに人気が集まっていること、元々都心では用地を確保するのが難しいことなど、需給関係による価格上昇要因は、あると思います。しかし、このグラフのように連動していると、景気の先行きに対する安心感から、投資半分の気持ちで購入する方々や、都心のブランド力のあるマンションやタワーマンションは間違いなく値上がりするという思惑から投資されている方々によって値がつりあげられている可能性もあります。ローンを組んで住宅を購入する場合、この高値圏は、もしかしたら不動産バブルなのかもしれないという視点は忘れるべきではありません。住宅の評価額とローン残債の比較を怠ると、いざというときに困ります。ただ、そうはいっても、相場を動かすことはできません。
 そういうときは、住宅の購入時に物件を探す地域を少し広げ、投資マネーの流入が少なそうなエリアを探されることをお勧めします。物件価格が他のエリアに比べ大きく変動しているかを調べるのに役立つのは、不動産流通機構という機関のWebサイト(http://www.reins.or.jp/info/kikou.html)です。このサイトから、お探しのエリアを選択し、不動産市況動向のレポートを見ると、過去15年ほどの不動産売買の価格情報がわかります。左のグラフもそこのデータから作成しました。
 一生に何度もない大きな買い物ですから、インターネットショッピング以上に、価格の研究は必要だと思います。もし、わからなければ、お近くの専門家にご相談されるのも、ひとつの方法です。

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2018年01月01日

遠隔地での賃貸住宅の契約にはIT重説が便利

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遠隔地での賃貸住宅の契約にはIT重説が便利
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なるほど納得・・・・不動産!!……No.050   株式会社ありがとう・不動産
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 4月から新しく会社勤めをしたり、大学に入学したり、はたまた転勤したりと、2月から3月は、新天地での部屋探しをなさる方が多い季節です。しかし、それまでお住まいのところから離れた土地での部屋探しは大変です。まず、候補となる物件を探し、出向いて内見をする必要があります。そのなかから選んだ物件を申しこみ、いざ契約するとなれば、重要事項説明書(略して『重説』)を受けとって説明を受け、契約書を交わす必要があります。むかしは、「遠いところにお住まいですから……」と、重説も契約書も郵送などで済ませるのが一般的だったと思います。ただ、法律の解釈としては、この重説は、宅地建物取引士が自らの宅地建物取引士証を提示したうえで、『説明』をすることになっています。つまり、送りつけて終わりというわけにはいかない書類という解釈です。そのため大手企業では、法律遵守の観点から、以前のような対応が基本的に認められにくくなっています。そうはいっても、新天地での部屋探しの場合、内見から一定の期間をおいて、わざわざ重説のために不動産会社に出向くのは顧客にとって負担の大きい話でした。

 それが、平成29年10月より、『IT重説』といって、動画と音声を同時かつ双方向でやりとりできるシステムを使い、顧客が出向かずとも、離れた場所にいる宅地建物取引士から重要事項の説明が受けられるようになりました(http://www.mlit.go.jp/common/001201030.pdf)。

 この制度が施行される前のIT重説の社会実験で実施されたアンケートの結果は、以下のとおりです。
 IT重説に関して、一般消費者が注意すべき点は2点あると思いますが、そのうちの1点は、以下のグラフ【IT重説が不便であると感じた点】の24.9%を占めている、機器やシステムを使うための環境や知識がないと、準備等の負担が大きいということです。家族や友人の助けを借りても構わないので、スカイプなどの遠隔コミュニケーションツールを使うというハードルを超える必要があります。2点目は、契約しようとしている不動産会社がIT重説に対応しているかどうかです。このIT重説は、利便性向上のために、賃貸契約に限り、新たに認められるようになったもので、義務化されたものではありません。したがって、不動産会社によっては、IT重説を導入していない場合も考えられます。IT重説を利用したい場合は、問い合わせる必要があります。

 最後に一点補足があります。上記で賃貸契約に限りと書いたとおり、IT重説はいまのところ限定導入になっています。売買契約については、社会実験の事例が少なかったため、今後さらに事例を重ねて議論したうえ、導入するかどうか決められることになっています。

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