2018年03月01日

特許調査による開発の効率化D

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特許調査による開発の効率化D
弁理士   酒井俊之
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〜事前調査・分析のまとめ〜

1.調査を行わないリスクとは?

 前回まで事例を用いて説明してきたように、特許調査を行わない開発は大きなリスクである。

 調査を行わないリスクとしては、(1)重複研究・重複開発が挙げられる。すなわち、先行の研究・開発が存在しているにもかかわらず、同じ研究や開発を行ってしまうとリスクとである。言い換えれば、やらなくてもいい投資をしてしまうということになる。

 その他のリスクとしては、(2)特徴・優位性が出せる開発対象の特定ができないまま、研究や開発を行ってしまうというリスクである。要は、当てもなく研究や開発を行うというリスクである。
 そして、(3)侵害のリスクを背負い続けるというリスクもある。すなわち、ずっと、侵害しているかどうか、不安なまま事業を行うことになる。これでは、自信をもって、自社の商品、製品やサービスを提供できない。

 さらに、(4)どのような会社が競合になるか、市場におけるプレーヤーをよく把握せずに、その市場に居る(新規事業では入る)というリスクもある。

2.調査を行った上での開発の場合は?

 一方で、特許調査など必要な知的財産関係の調査を行った上での開発では、上記(1)〜(4)のリスクがすべてプラスに転じてくる。
 すなわち、(1)重複研究・重複開発を回避して、(2)特徴・優位性が出せる開発対象の特定を行った上で開発が行える。これにより、回収の見通しをもった投資が可能となる。
 また、(3)予め侵害リスクを把握することができ、侵害リスクを払拭して、自信を持って売り込みもできる。
 さらに、(4)競合他社を予め認識することができ、競合他社を意識した開発戦略が可能となる。

3.特許調査による開発の効率化

 このように、特許調査を行った上で開発を行うことで、リスクを低減しながら、開発の効率化、そして開発成果の最大限の活用を図ることができる。

 すなわち、膨大な特許情報の中から特許調査による必要な情報を取り出し、これを活用することで、今後の企業戦略を策定できる。

4.最後に 

 中小企業であれ、大企業であれ、多くの企業は、業務の効率化を図り、コストダウンをしているのに、知財情報を使った開発の効率化をしない手はない。
 今こそ、積極的に知財情報を使った開発の効率化にトライされるのが賢明であると思われる。

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◆プロフィール◆ 酒井俊之(さかいとしゆき)

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 1976年生。福島県伊達市出身。慶応大学院基礎理工学専攻修士課程修了。03年弁理士試験合格。04年弁理士登録。同年、創成国際特許事務所に入所。08年、福島事務所開設に当たり所長に就任。
 地方公共団体や新聞社主催の各種セミナーの講師として活躍する一方、事業モデル『知財制度の活用戦略』を展開。出願から20日で登録査定という早期の権利化モデルを実現。
 東北経済産業局特許室『東北地域知財経営定着支援事業』総括委員、東北工業大学非常勤講師など。

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2018年01月01日

特許調査による開発の効率化C

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特許調査による開発の効率化C
弁理士   酒井俊之
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〜調査を行わない開発は大きなリスク〜

1.知財情報を使った開発の効率化はできるのか?
 今回は、知財情報を使った開発の効率化の他の事例について説明する。
 もともとの問題の所在は、『中小企業であれ、大企業であれ、多くの企業は、業務の効率化を図り、コストダウンをしているのに、知財情報を使った開発の効率化がもっとできるだろう』というものである。

2.特許情報を活用した開発テーマの選定について
 特許情報の解析としてパテントマップによる技術の解析を行うことに加えて、そこにマーケティング情報を付加することで、ニーズも加味した開発テーマの選定が可能となる。
 下図は、即席麺に関する『市場ニーズを考慮した開発分野候補の検討』である。上側がパテントマップ、下側がマーケティング情報となっており、横軸は、いずれも共通となっている。
 パテントマップは、特許情報を解析してマップ上にビジュアル的に示したものである。一方、ここでのマーケティング情報は、ユーザへのアンケート結果である。

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 横軸を、発明における課題(ユーザニーズと同じ)として上下共通にすることで、同じ課題に対して、上側を見るとその業界の特許出願状況が、下側を見るとユーザの関心度が一度に把握できる。
 例えば、一番左側の『食材』については、上側のバブルチャートの大きさが出願件数に対応しており、『製造装置』や『添加物』に関する特許出願が少しあるのがわかる。一方、下側のバブルチャートの大きさが関心の高さであり、『男性』『女性』『20代』『30代』で、ある程度の関心が示されているのがわかる。
 同様に、中央の『食味風味』については、上側で特許出願が多くみられ、下側でもユーザの関心が払われているのがわかる。
 一方、右から3番目の『調理性』については、上側で特許出願が多いが、ユーザの関心はほとんどなく、ユーザニーズのない開発がおこなわれていることがわかる。
 ここで、特筆すべきは、中央に破線で示した『健康面』である。これは、上側で特許出願がほとんどない、すなわち、開発が手つかずであるにもかかわらず、下側でユーザの関心の高い事項であることがわかる。
 すなわち、このような『健康面』を開発テーマとして選定することで、ユーザニーズが高く、且つ、他社が未だ開発を行っていないテーマを選定して開発を行うことができる。

3.パテントマップによる開発の効率化
 このように、パテントマップ、さらにマーケティング情報をここに付加することで、(1)重複研究・重複開発を回避して、(2)特徴・優位性が出せる開発対象の特定を行った上で開発が行える。これにより、回収の見通しをもった投資が可能となる。また、(3)予め侵害リスクを把握することができ、侵害リスクを払拭して、自信を持って売り込みもできる。さらに、(4)競合他社を予め認識することができ、競合他社を意識した開発戦略が可能となる。

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◆プロフィール◆ 酒井俊之(さかいとしゆき)

酒井先生2.jpg

 1976年生。福島県伊達市出身。慶応大学院基礎理工学専攻修士課程修了。03年弁理士試験合格。04年弁理士登録。同年、創成国際特許事務所に入所。08年、福島事務所開設に当たり所長に就任。
 地方公共団体や新聞社主催の各種セミナーの講師として活躍する一方、事業モデル『知財制度の活用戦略』を展開。出願から20日で登録査定という早期の権利化モデルを実現。
 東北経済産業局特許室『東北地域知財経営定着支援事業』総括委員、東北工業大学非常勤講師など。

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2017年11月01日

特許調査による開発の効率化B

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特許調査による開発の効率化B
弁理士   酒井俊之
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〜調査を行わない開発は大きなリスク〜

1.知財情報を使った開発の効率化はできるのか?

 今回は、知財情報を使った開発の効率化の他の事例について説明する。
 もともとの問題の所在は、『中小企業であれ、大企業であれ、多くの企業は、業務の効率化を図り、コストダウンをしているのに、知財情報を使った開発の効率化がもっとできるだろう』というものである。

2.特許情報を活用した自社技術の競合および
  取引先候補の把握について

 特許情報の解析には、パテントマップによる技術の解析のほか、自社技術の競合や取引先候補の把握も可能である。
 下図のパテントマップは、図中の中心の自社(自社製品)に対して、
(1)青丸で示す競合と、
(2)黄色丸で示す自社製品の供給先候補が、解析の結果、クラスターとして表現されている。

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 この解析は、特許文献(特許出願後に公開される公開公報および特許後に公開される特許公報)を、言語解析(テキストマイニング)により、
(1)自社の技術(自社製品)に対して、同様の技術を取り扱う競合と、
(2)自社の技術(自社製品)を採用する、例えば、組み込み製品を取り扱う、供給先候補を、一定の群(クラスター分類)としたものである。

3.パテントマップによる開発の効率化

 このような解析が事前に行われれば、自社が現状認識している、競合や取引先に加えて、見えていない競合や取引先の把握に繋がる。

 そのため、特に、新規事業の立ち上げなどでは、市場における既存製品の分析と併せて、このような解析が有効であろう。

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◆プロフィール◆ 酒井俊之(さかいとしゆき)

酒井先生2.jpg

 1976年生。福島県伊達市出身。慶応大学院基礎理工学専攻修士課程修了。03年弁理士試験合格。04年弁理士登録。同年、創成国際特許事務所に入所。08年、福島事務所開設に当たり所長に就任。
 地方公共団体や新聞社主催の各種セミナーの講師として活躍する一方、事業モデル『知財制度の活用戦略』を展開。出願から20日で登録査定という早期の権利化モデルを実現。
 東北経済産業局特許室『東北地域知財経営定着支援事業』総括委員、東北工業大学非常勤講師など。

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2017年09月01日

特許調査による開発の効率化A

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特許調査による開発の効率化A
弁理士   酒井俊之
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〜調査を行わない開発は大きなリスク〜

1.知的情報を使った開発の効率化はできるのか?

 今回は、知財情報を使った開発の効率化の事例について説明する。
 もともとの問題の所在は、『中小企業であれ、大企業であれ、多くの企業は、業務の効率化を図り、コストダウンをしているのに、知財情報を使った開発の効率化がもっとできるだろう』というものである。

2.パテントマップを活用した自社技術の応用開発について

 まずは、パテントマップを活用した自社技術の応用開発について説明する。パテントマップは、特許情報を解析してマップ上にビジュアル的に示したものである。

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 上図のパテントマップは、中央に赤色でX社と記載されているのが既に開発済みの自社技術である。赤以外で示されている円は、X社以外の他社である。円の大きさは、出願件数に対応したものであり、円の大きさが大きいほど、出願件数が多いことを示している。
 次にマップの縦軸と横軸について説明する。縦軸は、その発明(技術)の解決しようとする“課題(目的)”であり、横軸は、その解決するための構成となっている。

 そうすると、前述のパテントマップでは、次のことが把握できる。(1)まず、中央に赤色で示した自社技術は、他社の開発技術とは独立した基本技術と位置付けられること、(2)また、自社技術を縦方向および横方向に展開しても他社の技術とはバッティングしないこと、(3)さらに、このような縦方向および横方向への展開により自社の基本技術を応用技術も含めて一群として囲い込みができることが把握できる。

3.パテントマップによる開発の効率化

 このように、パテントマップを活用することで、(1)重複研究・重複開発を回避して、(2)特徴・優位性が出せる開発対象の特定を行った上で開発が行える。これにより、回収の見通しをもった投資が可能となる。また、(3)予め侵害リスクを把握することができ、侵害リスクを払拭して、自信を持って売り込みもできる。さらに、(4)競合他社を予め認識することができ、競合他社を意識した開発戦略が可能となる。
 次回は、別の特許調査による開発の効率化の事例について説明する。

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◆プロフィール◆ 酒井俊之(さかいとしゆき)

酒井先生2.jpg

 1976年生。福島県伊達市出身。慶応大学院基礎理工学専攻修士課程修了。03年弁理士試験合格。04年弁理士登録。同年、創成国際特許事務所に入所。08年、福島事務所開設に当たり所長に就任。
 地方公共団体や新聞社主催の各種セミナーの講師として活躍する一方、事業モデル『知財制度の活用戦略』を展開。出願から20日で登録査定という早期の権利化モデルを実現。
 東北経済産業局特許室『東北地域知財経営定着支援事業』総括委員、東北工業大学非常勤講師など。

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2017年07月01日

特許調査による開発の効率化

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特許調査による開発の効率化
弁理士   酒井俊之
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 〜調査を行わない開発は大きなリスク〜

1.業務の効率化やコストダウンはしているのに?

 中小企業であれ、大企業であれ、多くの企業は、業務の効率化を図り、コストダウンをしているのに、知財情報を使った開発の効率化をしないのは、なぜだろう?

 もちろん、製品を出すのに目下奮闘中で、知財を考えるのは、製品が出来上がった後の話というのは想像がつく。開発現場からは、お客が目の前にいて、何とかしなくてはいけないのに、知的財産のことまで手がまわらないと言われそうである。

2.調査を行わないリスクとは?

 しかし、特許調査を行わない開発は大きなリスクである。調査を行わないリスクとしては、(1)重複研究・重複開発が挙げられる。すなわち、先行の研究・開発が存在しているにもかかわらず、同じ研究や開発を行ってしまうとリスクとである。言い換えれば、やらなくてもいい投資をしてしまうということになる。

 その他のリスクとしては、(2)特徴・優位性が出せる開発対象の特定ができないまま、研究や開発を行ってしまうというリスクである。要は、当てもなく研究や開発を行うというリスクである。
 そして、(3)侵害のリスクを背負い続けるというリスクもある。すなわち、ずっと、侵害しているかどうか、不安なまま事業を行うことになる。これでは、自信をもって、自社の商品、製品やサービスを提供できない。

 さらに、(4)どのような会社が競合になるか、市場におけるプレーヤーをよく把握せずに、その市場に居る(新規事業では入る)というリスクもある。

3.調査を行った上での開発の場合は?

 一方で、特許調査など必要な知的財産関係の調査を行った上での開発では、(1)重複研究・重複開発を回避して、(2)特徴・優位性が出せる開発対象の特定を行った上で開発が行える。これにより、回収の見通しをもった投資が可能となる。
 また、(3)予め侵害リスクを把握することができ、侵害リスクを払拭して、自信を持って売り込みもできる。
さらに、(4)競合他社を予め認識することができ、競合他社を意識した開発戦略が可能となる。

4.特許調査による開発の効率化

 このように、特許調査を行った上で開発を行うことで、リスクを低減しながら、開発の効率化、そして開発成果の最大限の活用を図ることができる。
 すなわち、膨大な特許情報の中から特許調査による必要な情報を取り出し、これを活用することで、今後の企業戦略を策定できる。

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◆プロフィール◆ 酒井俊之(さかいとしゆき)

酒井先生2.jpg

 1976年生。福島県伊達市出身。慶応大学院基礎理工学専攻修士課程修了。03年弁理士試験合格。04年弁理士登録。同年、創成国際特許事務所に入所。08年、福島事務所開設に当たり所長に就任。
 地方公共団体や新聞社主催の各種セミナーの講師として活躍する一方、事業モデル『知財制度の活用戦略』を展開。出願から20日で登録査定という早期の権利化モデルを実現。
 東北経済産業局特許室『東北地域知財経営定着支援事業』総括委員、東北工業大学非常勤講師など。

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