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┗■本を整理していたら……島崎藤村の詩集が出てきた。
本の捜し物をしていたら……思いがけず懐かしい本が出てきた。
それは
島崎藤村の詩集だった。
パラパラとページをめくる。
まだ十代だった頃……は
高村光太郎、石川啄木、島崎藤村、ゲーテ、など
訳も分からず詩集を読みふけり
その一節を暗記して酔い痴れていたこともあった。
40年ぐらい前に
出張で行っていた長野県佐久市にある
「小諸懐古園」にいらしたあの人。
当時……
懐古園の草笛禅師と言われた横山祖道さんが
千曲川を見下ろせる大きな石に座って
切々とした情緒豊かな草笛の音色で
「千曲川旅情の歌」を演奏していたが
もう一曲、印象に残っているのは
島崎藤村の「若菜集」の中の
『初恋』……だ。
『初恋』
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅(うすくれなゐ)の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃(さかづき)を
君が情(なさけ)に酌みしかな
林檎畠の樹(こ)の下(した)に
おのづからなる細道は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
千曲川旅情の歌
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子(ゆうし)悲しむ
緑なすはこべは萌えず
若草も藉くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡邊
日に溶けて淡雪流る
あたゝかき光はあれど
野に滿つる香(かをり)も知らず
淺くのみ春は霞みて
麥の色わづかに青し
旅人の群はいくつか
畠中の道を急ぎぬ
暮れ行けば淺間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飮みて
草枕しばし慰む
昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪(あくせく)
明日をのみ思ひわづらふ
いくたびか榮枯の夢の
消え殘る谷に下りて
河波のいざよふ見れば
砂まじり水卷き歸る
嗚呼古城なにをか語り
岸の波なにをか答ふ
過(いに)し世を靜かに思へ
百年(もゝとせ)もきのふのごとし
千曲川柳霞みて
春淺く水流れたり
たゞひとり岩をめぐりて
この岸に愁(うれひ)を繋(つな)ぐ
そして……
若き時代の……我が青春を懐かしむ。
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posted by 寛良 at 23:11| 東京 ☁|
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