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相続税対策という名の資産減少にならないためには
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なるほど納得・・・・不動産!!……No.044 株式会社ありがとう・不動産
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2015年の相続税改正が影響して、以前にもまして相続税対策が意識されるようになり、ここ数年アパートやマンションの建設や購入を目的としたローンの貸出額が増えています。以下のグラフは、過去10年間のローン件数と新規貸出額の単年度合計の推移です。相続税の増税が決まったあとの貸出金額の増加傾向は、一目瞭然です。ここで注意すべきなのは、長年アパート等を貸して収益をあげてきたオーナーがその一環としてローンを組むのではなく、たまたま土地などの資産を持っていて、相続税の支払いで資産が減るのを嫌い、建設業者の営業担当者に勧められるまま、所有する土地にアパート等を建設するケースがこの急増を支えている点です。最近では金融庁も警戒感をあらわしていると報道されています。
ではなぜ、不動産賃貸の知識も経験もない土地所有者がローンを組んでまで賃貸アパートを建てるのでしょうか。建設業者の営業が力を入れるセールポイントを2点ご紹介します。ひとつめは、相続税の節税効果です。不動産の評価額は、賃貸物件になると大幅に下がります。賃貸アパート等の借主は、一般消費者として保護されているため、借主を立ち退きさせて、不動産を売却するといったことが簡単にできなくなるため、評価額が下がるわけです。ふたつめは、一括借り上げによる安定的な収入です。一括借り上げとは、25年や30年といった長期にわたり、一定の家賃収入を保証すると謳ったものです。つまり、土地所有者は、営業担当者の助けを借り、ローンを組んでアパート等を建て、それを一括で借り上げてもらえば、その収入でローンを返済し、完済したあとは、安定的収入を得られると考えるわけです。しかし、注意すべきは一括借り上げの仕組みです。
30年といった長期保証が謳い文句であっても、そのアパート周辺の競合物件の賃料が大幅に下がれば、たとえ空室がなくても収益は減少し、契約時の保証賃料が見直されることになります。その時点で俄か家主さんが慌てて契約書を読み込むと、保証賃料が見直される条件が小さく書かれてあるのに気がついたという話はよくあります。また保証賃料の見直しを渋っている俄か家主さんが一括借上会社が倒産すれば元も子もないと脅されたという話も聞きます。どちらにせよ、一括借り上げをした会社のみがリスクを背負うということではなく、一括であろうと貸した側もリスクを背負う結果になります。それでも、賃料の下げ幅が小さかったり、ローン借入額が少なかったり、ローンの返済に支障がなければいいほうで、返済に窮してアパートなどが差し押さえられることもあり得ます。相続税を少なくしようと手を出したアパート経営によって、相続税を支払う心配どころか、借金が残ってしまうこともあり得ます。
そうならないためには、アパートを建ててしまえば利益を十分に確保できる建設業者とも、俄か家主さんにリスクを転嫁する一括借上会社とも、不動産を担保にローンを貸す銀行とも関係のない第三者の税理士や不動産業者といった専門家の意見を聞くことだと思います。