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新規事業の立ち上げと事業譲渡
新規事業の立ち上げと事業譲渡
弁理士 酒 井 俊 之
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1.新規事業の立ち上げ
近年、弱電系を中心に、新規事業の立ち上げに伴う、知的財産の相談が増えてきている。ご存知のように、家電業界やエレクトロニクス業界の不況の煽りで、“生き残りをかけた”本業以外への進出が進んでいる。
当然、新規事業となると本業とは異なる事業領域であるため、十分な情報がなく、事業戦略があいまいなまま進んでしまうケースが多い。
2.新規事業の知財サポート
このような企業に対して、知的財産のサポートを行う場合には、知的財産情報から簡単に判ることを積み上げて整理することが多い。
すなわち新規事業分野で特許調査を行うことで、
(1)誰が権利者(プレーヤー)で、
(2)どのような権利を保有しているか、
(3)さらに最近の出願件数は、
などは、簡単に判る。
このような特許調査の結果(特許から判る開発状況)と、企業側が集めた既存製品の情報(市場における実製品の情報)とを照らし合わせていくことで、ターゲットとすべき市場や開発すべき対象が絞られてくる。
また、このようなプロセスを踏むことで、予め抵触する特許を回避することや、既存技術の重複開発を回避することができ、自社の開発した成果の権利化も期待できる。これは知財リスク・開発リスクの大いなるヘッジである。
3.事業譲渡
新規事業の立ち上げが順調にいっても、立ち上げた新規事業を譲渡するケースも近年散見される。
余談になるが、新規事業の立ち上げがうまくいかなかったり、うまくいってもその事業自体を譲渡せざるを得ないのは、もともと本業が不振になった後に、新規事業の立ち上げを開始していることの影響が大きいように感じられる。
すなわち、本業との関係で、資金的・人材的・時間的に新規事業の立ち上げに専念できず、いずれにしても新規事業が長続きしないようである。
その意味では、知財を使って資金面も含めた事業安定性が確保できることが望ましいが現状では、そこまでは難しいようである。
一方で、立ち上げた新規事業を手放す場合、事業自体の評価(収益性)が主となるが、知財回りをしっかりしておこくことで事業譲渡の成功につながったケースに、ここ数カ月で2件ほど関わることになった。
次回は、この2件について、詳細を検討してみたい。
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◆プロフィール◆ 酒井俊之(さかいとしゆき)

1976年生。福島県伊達市出身。慶応大学院基礎理工学専攻修士課程修了。03年弁理士試験合格。04年弁理士登録。同年、創世国際特許事務所に入所。08年、福島事務所開設に当たり所長に就任。
地方公共団体や新聞社主催の各種セミナーの講師として活動する一方、事業モデル『知財制度の活用戦略』を展開。出願から20日で登録査定という早期の権利化モデルを実現。
東宝経済産業局特許室『東北地域知財経営者及び知財活動復興支援事業』総括委員。東北工業大学非常勤講師など。
◆プロフィール◆ 酒井俊之(さかいとしゆき)

1976年生。福島県伊達市出身。慶応大学院基礎理工学専攻修士課程修了。03年弁理士試験合格。04年弁理士登録。同年、創世国際特許事務所に入所。08年、福島事務所開設に当たり所長に就任。
地方公共団体や新聞社主催の各種セミナーの講師として活動する一方、事業モデル『知財制度の活用戦略』を展開。出願から20日で登録査定という早期の権利化モデルを実現。
東宝経済産業局特許室『東北地域知財経営者及び知財活動復興支援事業』総括委員。東北工業大学非常勤講師など。
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