2014年09月01日

現在の数値より推移と傾向を重く観る

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リスクのクスリ
現在の数値より推移と傾向を重く観る
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数値を瞬時で捉えても実態は見えない

 経営者の中には、月次試算表を読み解こうと学習をしないばかりか、決算時の『確定申告書』については会計事務所に任せきりで、その会社の数字の個々の意味を解析することもしない。 解析しないと言うより、その必要性を感じていないのかも知れません。
 設立8年目の会社から依頼を受けた新任の営業課長研修の際、試算表や決算書の重要性と読み方について研修する機会をいただいたとき、いかに分かりやすく説明するかが鍵だと、様々な図表を作成してみました。
 営業関係者の研修であったので、試算表の中の『損益計算書(P/L)』については、8年生の成績表です・・・・、という説明によって容易に理解をしてくれた。売上高、売上原価、営業粗利益、販売管理費、・・・・経常利益と、様々に条件を変えてシミュレーションを繰り返し、利益を出すために営業としてどうあるべきかを検証した。後半では、キャッシュフローとは何ぞやというテーマにて『資金繰り計算書』を作成する過程で『貸借対照表(B/S)』の重要性について学習するようにしました。
 『貸借対照表』とは、現時点(8年生の時)における会社の体力の状態を表す『健康診断書』や資産台帳や借金一覧表を表すものであると学んでいただきました。美しく均整のとれたプロポーションであるのか、無駄なものがやけに多いメタボや、逆にギスギスした栄養失調の体型なのか・・・肉体、経済、精神、環境・・・などがバランス良く成長しているのかを知ることの大切さを学んでいただきました。
 ここまでの学習は、あくまでも会社の数値を平面上で書き表した単月、単年の『断面的数値』の絶対値を検証するだけに止まっていました。
 脈々と続く会社経営の実態を、ある時点の絶対値だけで判断するのは問題であることを、全員で認識していただきました。

数値の傾向を観てこそ対策が立てられる

 月次試算表や確定申告書が出来上がったときには、その数値はすでに過去の絶対値であることを忘れてはならないのです。
 繰り返しますが、試算表も決算書も単独で見るとある瞬間の断面の絶対額でしかありませんが、その絶対額を時間軸の上に時系列的に並べることによって新たな命が蘇るかのように、その会社の経営状況が明確な傾向として観られるようになってきます。
 時系列で並べることによって、前月、当月、来月・・・、昨年、今年、来年・・・と、絶対額に動きが出る、つまり絶対額をグラフに置き換えてみると『傾き』が明らかになり、傾きを↑、→、↓の矢印に変え矢印の方向を読み取る経営者の意識が『傾向を観て対策を立てる』冷静な経営判断ができる所以でもあります。

粉飾決算は信頼関係を根本から覆す

 粉飾決算か正規決算かの線引きには緒論がありますが、経営分析表から実態と対比させて粉飾決算を見つけられ、見せかけの「損益計算書」をつくると「貸借対照表」に異常な数値が見つけられます。特に、時系列的に推移表で見ると「B/S」と「P/L」にまたがる比較分析表が糸口になります。
 特に「棚卸資産回転率」や「売上債権回転率の分析」がそれに該当します。
 また、財務諸表の注記欄を注目しましょう。収益の認識基準、償却方法、棚卸し評価法などが実態に添っているかどうかも注意すべきです。
 該当する業界の動勢とは反するような決算内容であった場合なども、経営努力に因るものなのか粉飾なのかという疑問も拭えないものです。

 一度粉飾決算をすると、それを挽回して正規決算に戻すには莫大なエネルギーが必要となり、時が経つにつれて過去の忘れてしまいたい遺物として引きずり、業績がそこそこに推移するうちに、やがて慢性化して忘れてしまうこともあります。
 業績が悪化したときなど、経営分析をしていた第三者からの指摘で【粉飾決算】が発覚すると、それまで築き上げてきた信頼関係は一気に失墜し、順調であった取引関係が打ち切りになることもあるので、早期に改善すべきことですが、かなりの体力が必要です。

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posted by 寛良 at 13:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ■【RFCレポート】リスクのクスリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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