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リスク・カウンセラー奮闘記−140
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リスク・カウンセラー奮闘記−140
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◆個人資産が底をつくまで事業を続行か?
5期もの連続赤字が続く小売業の経営者からの相談は、度々催促しても支払ってもらえない商品の売掛代金を回収するための方策であった。
狭い業界だったので関係取引先との「三角相殺」や「売掛金差押」など幾つかの方法と弁護士との打ち合わせを提案したが、結局は、その売掛金は回収されないまま現在に至っている。
5期連続で赤字なのに経営が成り立っているのかが心配でした。その経営者は三代目社長で、不動産など幾つかの資産を個人と会社で所有していて、5年間で現在の自宅兼会社のビル1棟(本丸)と、賃貸中のマンション1室以外はすべて抵当権が設定されていて、不動産賃料で借入ローンの支払をしていた。
総ての所有不動産を調査してみたら、5年間に本丸以外の不動産に順次抵当権が設定されていて、資金繰りが廻らないと言っては借入をしていてその都度抵当権を設定されていた。
当然なことだが、借入金は評価額の65%ぐらいで、借入金総額が数億円に達している。 営業粗利益が販売管理費の半分で、販売管理費の半分が役員報酬であることが判明した。
つまり、役員報酬の支払を除けば収支はトントンなのだが、そのほかに借入元金の返済と利息の支払が毎月数百万円ある。役員報酬と借入金元本返済額と支払利息分を不動産を担保提供して「借入金」の実行をし、借り入れして支払っていることになるのだから、これは正に不動産を食い潰している状況でした。
◆社長が病気、初期の胃がんで意欲消沈か?
もの静かで温厚な社長ですが、訪問した時に病院に行っているとのことで、実は2年前から通院加療中だとのこと。思わず「会社とご自分の身体とどちらが大切だと思っていますか?」と尋ねると、「そりゃ〜もちろん身体ですよ!」と言う応えが返ってきました。
「それでは会社を閉じましょう!」とチョット強い言葉で言ってしまった。帰ってきた言葉は「そんなことはできませんよ!」思った通りの言葉だった。
何年間にもわたり、借金を繰り返し、借金の使途は役員報酬と借金の返済に回していた社長だからやめられない理由は『見栄』でしかない。
近日中に再び借入金の申込みをするのだというので、大至急『清算B/S』を作る段取りに着手した。
不動産の時価評価(売却諸経費を控除)、売掛金、貸付金の実態調査、「試算表のB/S」に計上している金額はどんどんマイナスになる。勿論、負債の部の金額は計上漏れを加算すると増えていく。
当社の見解は、いま会社を閉鎖すれば自宅以外のマンションと自宅兼会社のビルを売却した「手残り金」の2500万円が残るが、あと1年後にはマンションがなくなる。
病気のため100%の体力で働けない現状をみると、会社を閉鎖し、ビルを売却して現金を手元に残し、マンションを明け渡してもらい自分たちが移り住み、健康回復に専念して欲しいと願っていますが、ご理解いただけるものかどうかが、私の一番の課題で、本人の不安を取り除くよう繰り返しの話し合いが必要なようです。
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