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リスク・カウンセラー奮闘記−139
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リスク・カウンセラー奮闘記−139
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◆再建には悪習を壊し堅固な礎をつくる!
三期連続の赤字が続き、当期の営業利益もプラスに転じることができない企業の再建依頼は、先ず実態解明のためのスクリーニングを行うことから始め、問題点の発見とその問題点を生じさせた経営者と社員の悪しき習慣を見つけ出すことが重要だった。
社員数が20人に満たない会社で、売上高の約60%を占める部門の社員が、社長の言動が引き金となって一気に7人も辞表を提出してきたことを皮切りに、その会社の改革が始まった。
社内の人材を見渡せば、残った社員は利益に貢献するものは数人。これでは、自ら利益を産まない「上司が教えてくれない!」という研修生のような意識の社員にはご遠慮いただかねばならない場合もある。
問題点とそれに関わっていた者の悪しき習慣を徹底的に追求し、悪しき習慣を止めさせ改善施策を話し合うのだが、ほとんどの人が悪しき習慣を変えることができず、退職への選択肢を選ぶことが多い。むしろそれでいいのだ。
ゆるやかに意識の改革をすることで再生できる企業もあるだろう。しかし、大津波や大地震でほとんどの業務が停止した企業では、事業の再建(再興)に関わる社員の中に旧態依然とした意識のままのぶら下がり社員がいたのでは、改革の速度が上がらない。むしろ、自主的に退職して貰った方がいい場合がある。
社内の悪習を黙認してきた経営者が、自らそれを断行できないのであれば、冷静かつ客観的な視点で判断できる者が代わって断行しなければならない。
改革プランのスタートに当たり、社長の了解を得た。社長に代わって悪習を排除することと、排除後の再生プランに向けた体制の準備を同時進行させることを再度確認してスタートする。マイナスとプラスをどのように采配するのかは言うほど容易なことではない。
時には、社員の意識をそうさせてきた経営者の意識をも変えて貰わなければならないからだ。
◆得魚忘筌(とくぎょぼうせん)で再生頓挫か!
再生の中場において、大きく荒れていた海面が一瞬だけ凪の状態になることがある。静かな海を観ていると、今までの大荒れの海の様子を忘れて「この状態なら今から自分でもできるわい…」と、大きな勘違いをする場合がある。
荒れた海を治めてから、やがて来る大航海に挑む準備をしている時なのに、何と甘い判断をする経営者なのだろうか。
「得魚忘筌」(魚を捕ってしまうと、その道具の筌やなのことなど忘れてしまうということから、いったん目的を達してしまうと、それまでに役に立ったものの恩恵も忘れてしまうという意味)という言葉があるが、悪習に甘んじていた社員が自主的に退社したことが再生計画のスタートだと理解できないのは残念だ。
現実には「得魚・・」(目的達成・成果)の状態になるのはこれからであるのに、「もう自分でできるから…、好きなようにやらせてくれ…」と言う。
言動では「得魚」どころか事が中場なのに「・・忘筌」では、シッチャカメッチャカな話だ。
日本では「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と似たような意味の言葉があるが、喉元を過ぎるか過ぎないかの口の中で羹(アツモノ)を転がしているような状態では、喉元で熱さも感じないままという姿を想像すると…。でも再生を頓挫させるわけにはいかないのは言うまでもない。
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